スペイン語の「この・その・あの/これ・それ・あれ」の基本
- este・ese・aquel は、指している名詞の性・数に合わせて形が変わります。
- esto・eso・aquello は中性の指示代名詞で、性・数による形の変化はありません。
- 日本語の「こ・そ・あ」と似ていますが、使い分けが完全に一致するわけではありません。
- esto・eso・aquello は、物だけでなく、発言・出来事・状況などを指すこともできます。
スペイン語には、日本語の「この・その・あの」「これ・それ・あれ」に近い働きをする指示詞があります。
基本となるのは、este、ese、aquel の3系列です。
日本語の「こ・そ・あ」と似ているため、最初は対応させて考えると理解しやすいですが、実際の使い分けは距離だけで機械的に決まるわけではありません。
este・ese・aquel の形一覧
este、ese、aquel は、指している名詞の男性・女性、単数・複数に合わせて形が変わります。
| 系列 | 形 |
|---|---|
| este 系 | 男性単数:este 女性単数:esta 男性複数:estos 女性複数:estas 中性:esto |
| ese 系 | 男性単数:ese 女性単数:esa 男性複数:esos 女性複数:esas 中性:eso |
| aquel 系 | 男性単数:aquel 女性単数:aquella 男性複数:aquellos 女性複数:aquellas 中性:aquello |
たとえば、男性名詞 libro には este libro、女性名詞 casa には esta casa のように使います。
複数なら、estos libros、estas casas のように指示詞も複数形になります。
一方、esto・eso・aquello には男性形・女性形の区別がなく、複数形もありません。
指示形容詞と指示代名詞という呼び方について
スペイン語の学習書では、este libro のように名詞と一緒に使うものを「指示形容詞」、Quiero este. のように名詞なしで使うものを「指示代名詞」と分けて説明することがあります。
これは学習上よく使われてきた分類ですが、現在のスペイン語文法では、男性形・女性形の este・esta・ese・esa・aquel・aquella などについて、名詞が省略されている場合も含めて限定詞として分析する考え方が一般的です。
一方、esto・eso・aquello は常に代名詞として使われます。
初級段階では、文法用語そのものよりも、「名詞を一緒に言う場合」「名詞を省略する場合」「中性の esto・eso・aquello」という3つの使い方を区別すると理解しやすくなります。
名詞と一緒に使う este・ese・aquel
名詞を直接指す場合は、その名詞の性と数に合わせます。
Este libro es fácil.
直訳:この本は簡単です。
意訳:この本はやさしいです。
Esa mesa está libre.
直訳:そのテーブルは空いています。
意訳:そのテーブルは空いています。
Aquella casa era de mis abuelos.
直訳:あの家は私の祖父母のものでした。
意訳:あの家は祖父母の家でした。
このように、名詞の前に置いて「この本」「そのテーブル」「あの家」のように対象を示します。
名詞を省略して使う場合
何について話しているか会話の流れから分かっている場合は、名詞を繰り返さず、este・esta・ese・esa・aquel・aquella などだけで表すこともできます。
De estas camisas, prefiero esta.
直訳:これらのシャツの中では、私はこの[シャツ]をより好みます。
意訳:このシャツの中なら、私はこれが好きです。
ここでは、最後の esta のあとに camisa がありません。しかし、何を指しているか分かっているため、名詞を省略できます。
¿Te gustan esos zapatos? Prefiero aquellos.
直訳:君はそれらの靴が好きですか? 私はあれら[の靴]をより好みます。
意訳:その靴が好き? 私はあっちのほうが好きです。
aquellos は、文脈上省略されている男性複数名詞 zapatos に対応しています。

名詞を言わなくても、男性形・女性形や単数・複数はそのまま残るの?

はい。省略した名詞が何なのかは会話の中で分かっているので、その名詞に対応する形を使います。
esto・eso・aquello の使い方
esto・eso・aquello は中性の指示代名詞です。
男性名詞や女性名詞を直接修飾する形ではなく、名前を付けずに対象を指したり、発言・出来事・状況などをまとめて指したりするときに使います。
名前を付けずに物を指す
目の前にある物が何か分からないときには、次のように尋ねられます。
¿Qué es esto?
直訳:これは何ですか?
意訳:これ、何ですか?
答える場合は、次のように言えます。
Es una piña.
直訳:パイナップルです。
意訳:パイナップルです。
また、対象を指しながら次のように言うこともできます。
Esto es una piña.
直訳:これはパイナップルです。
意訳:これはパイナップルです。
ここで重要なのは、piña が女性名詞だからといって、esto を自動的に esta へ変更する必要はないことです。
esto は中性の代名詞として、そのまま文の主語になることができます。

piña は女性名詞だから、Esta es una piña. にしないといけないと思ってた。

Esta es una piña. という文自体は文脈によって成立します。ただし、「正体が分かったから esto が esta に変わる」という規則ではありません。esta では、文脈上分かっている女性名詞が省略されていると考えると理解しやすいです。
発言や内容を指す eso
esto・eso・aquello が指すのは、具体的な物だけではありません。
特に eso は、相手が言ったことや、直前に話題になった内容を「それ」とまとめて指すときによく使われます。
No entiendo eso.
直訳:私はそれを理解しません。
意訳:それ、よく分かりません。
ここでの eso は、一つの男性名詞や女性名詞ではなく、相手の説明や発言内容全体を指すことができます。
Eso no es cierto.
直訳:それは本当ではありません。
意訳:それは本当ではありません。
この場合も、eso は相手が言った内容などをまとめて「それ」と指しています。
出来事や状況を指す aquello
aquello は、現在から離れた出来事や、過去の状況などを「あれ」「あのこと」のように指すことがあります。
Aquello fue difícil.
直訳:あれは難しかったです。
意訳:あのことは大変でした。
この aquello は、特定の名詞一語ではなく、以前の出来事や状況全体を指しています。
esto・eso・aquello に複数形はない
esto・eso・aquello には複数形がありません。
estos や aquellos は中性形の複数ではなく、それぞれ男性複数形です。
- esto:中性
- estos:男性複数
- aquello:中性
- aquellos:男性複数
形が似ているため、ここは区別しておくと理解しやすくなります。
este・ese・aquel の距離の考え方
este・ese・aquel の違いは、まず「話し手や聞き手との距離」から考えると理解しやすくなります。
- este 系:話し手の近くにあるものを指す基本形
- ese 系:聞き手の近くにあるものを指す基本形
- aquel 系:話し手・聞き手の双方から離れたものを指す基本形
これは、3系列で整理する伝統的な考え方です。
日本語の「この・その・あの」と似ていますが、日本語と完全に一対一で対応するわけではありません。
実際の会話では、物理的な距離だけでなく、何について話しているか、話し手がその対象をどのように捉えているかなども関係します。
este:話し手に近いもの
¿De quién es este teléfono?
直訳:この電話は誰のものですか?
意訳:この電話、誰のですか?
話し手の手元や近くにある物を指す場面を想像すると分かりやすい用法です。
ese:聞き手の近くにあるもの
¿Puedes pasarme ese vaso?
直訳:君はそのコップを私に渡すことができますか?
意訳:そのコップ、取ってくれる?
伝統的な3系列の考え方では、聞き手の近くにあるものを指す場合に ese 系を使います。
aquel:話し手・聞き手から離れたもの
¿Ves aquella montaña?
直訳:君はあの山が見えますか?
意訳:あの山、見える?
話し手と聞き手の双方から離れたものを示すのが、aquel 系の基本的なイメージです。
ただし、実際のスペイン語では、必ずこの3段階を機械的に使い分けるわけではありません。ラテンアメリカの一部の地域では、近いものを este、離れたものを ese で表すような2系列に近い使い分けも見られ、aquel が回想的な用法などで使われることがあります。

最初は「este=近い、ese=その中間や相手側、aquel=遠い」という3段階を基本として理解し、実際の会話では地域や文脈によって使い分けが異なることもある、と考えるとよいでしょう。
指示詞は時間的な距離にも使える
este・ese・aquel は、目に見える物の距離だけでなく、時間的な距離を表すときにも使われます。
Esta semana tengo mucho trabajo.
直訳:この週、私はたくさん仕事があります。
意訳:今週は仕事がたくさんあります。
esta semana は、現在を含む「今週」を指しています。
Aquella época fue muy diferente.
直訳:あの時代はとても異なっていました。
意訳:あのころは今とはずいぶん違っていました。
aquella época のように、現在から心理的・時間的に離れて感じられる過去を振り返るときに aquel 系が使われることがあります。
ただし、「1年前だから aquel」「数日前だから ese」というように、経過した時間だけで機械的に決まるわけではありません。
話し手がその時期をどのように捉えているかや、会話の文脈によって選ばれる形が変わることがあります。
este・ese・aquel にアクセント符号は必要?
現在の一般的な表記では、este・ese・aquel とその女性形・複数形には、名詞を伴わずに使う場合でも原則としてアクセント符号を付けません。
- este
- esa
- aquellos
古い文章や以前の表記法では、éste、ésa、aquéllos のようにアクセント符号が付いた形を見ることがあります。
現在は、曖昧さがない場合にはアクセント符号を付けません。代名詞として使われ、文脈だけでは意味が曖昧になる場合には、アクセント符号を付けることも任意で認められていますが、一般には付けない表記が推奨されています。
スペイン語を学ぶ際は、基本的にアクセント符号を付けない形で覚えておくとよいでしょう。
なお、esto・eso・aquello にアクセント符号を付けることはありません。
まとめ
- este・ese・aquel は、指している名詞の性と数に合わせて形が変わります。
- 名詞を省略して使う場合も、文脈上省略されている名詞の性・数に対応した形を使います。
- esto・eso・aquello は中性の指示代名詞で、複数形はありません。
- esto・eso・aquello は、名前を付けていない物だけでなく、発言・出来事・状況なども指せます。
- ¿Qué es esto? に対して、Esto es una piña. のように esto をそのまま使うことができます。
- este・ese・aquel の距離感は日本語の「こ・そ・あ」と似ていますが、完全に同じではありません。
- 物理的な距離だけでなく、時間や文脈上の距離を表すこともあります。
- 現在の表記では、este・ese・aquel などには原則としてアクセント符号を付けません。

