スペイン語「しなければならない」の使い分け|deber, tener que, hay que の違いとニュアンス

スペイン語「しなければならない」の使い分け スペイン語の文法
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どちらかというとラテンアメリカのスペイン語です。初級者による記録のため誤解があるかもしれません。ご理解くださいませ。

スペイン語で「~しなければならない」という義務を伝える表現には、主に deber, tener que, hay que の3つがあります。

辞書や翻訳ツールでは、どれも「しなければならない」と訳されてしまいがちですが、ネイティブスピーカーは状況やニュアンスによって明確に使い分けています。

この記事では、ラテンアメリカのスペイン語圏での実例を交えながら、これら3つの表現の違いと正しい使いどころを解説します。

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スペイン語の3つの義務表現「~しなければならない」の違い

まずは、3つの表現が持つ「義務のニュアンス」の違いを整理しましょう。

  • deber + 不定詞:【道徳・任務】内面からくる強い義務。「~すべきだ」
  • tener que + 不定詞:【必要性・状況】外的な事情による義務。「~する必要がある」「~しないといけない」
  • hay que + 不定詞:【一般論】社会通念やルール。「(一般的に人は)~するものだ」

日常会話でもっとも頻繁に使われるのは「tener que」です。「deber」は響きが強いため、使いどころに注意が必要です。

【deber】道徳的・強い義務「~すべきだ」

動詞 deber は、3つの中でもっとも「義務」のニュアンスが強い表現です。法律、規則、あるいは個人の道徳観に基づいて「当然そうあるべきだ」という場合に使われます。

日本語では「~しなければならない」よりも「~すべきだ」と訳すと、その強さが伝わりやすくなります。

Debemos regresar.
直訳:私たちは戻るべきである。
意訳:私たちは戻らなければならない。

Debes ayudarla.
直訳:君は彼女を助ける義務がある。
意訳:君は彼女を助けるべきだよ。

Debiste hacerlo.
直訳:君はそれをするべきであった。
意訳:君はそうすべきだったのに(なぜしなかったのか)。

否定文は「してはいけない」(禁止)

否定形の no deber + 不定詞 は、「~するべきではない」転じて「~してはいけない」という禁止の意味になります。

No debes tocarlo.
直訳:君はそれに触れるべきではない。
意訳:それに触ってはいけないよ。

No debes decir eso.
直訳:君はそれを言うべきではない。
意訳:そんなことを言ってはいけません。

No deben entrar.
直訳:あなたたちは入るべきではない。
意訳:中に入ってはいけません。

このように、deber は肯定文でも否定文でも非常に強い口調になります。親しい間柄であっても、使い方によっては上から目線の命令や説教に聞こえることがあるため注意しましょう。

活用形「debería」で柔らかく提案する

会話で相手にアドバイスをする際、deber の現在形(debes)を使うとキツイ印象を与えてしまいます。
そこで、可能法(過去未来)の debería を使うことで、「~したほうがいいんじゃないかな」と柔らかく提案することができます。

Deberías ayudarla.
直訳:君は彼女を助けるべきだろうに。
意訳:彼女を助けてあげたほうがいいよ。

Deberías saberlo.
直訳:君はそれを知っておくべきだろう。
意訳:そのくらいは知っておいたほうがいいよ。

動詞 deber の活用や詳しい意味については、以下の記事も参考にしてください。

動詞 deber「すべきである、しなければいけない」の活用と意味【例文あり】

【tener que】必要性・外的要因「~する必要がある」

動詞 tener que + 不定詞 は、義務というよりも「必要性」に重点を置いた表現です。

構造を分解して考えると理解しやすくなります。

  • Tener(持っている)+ que(関係詞)+ hacer(すること)
    =「すべきことを抱えている」⇒「~する必要がある」

「明日早いから寝なきゃ」「宿題をやらなきゃ」といった日常的な状況では、deber ではなく、この tener que が好んで使われます。

Tengo muchas cosas que hacer.
直訳:私はすべき多くのことを持っている。
意訳:やらなきゃいけないことがたくさんあるんだ。

Tengo que hacer muchas cosas.
直訳:私は多くのことをする必要がある。
意訳:たくさんのことをしなくちゃいけない。

Tenemos que limpiar la cocina.
直訳:私たちは台所を掃除するという(タスクを)持っている。
意訳:台所を片付けないといけないね。

Tenías que estudiar inglés.
直訳:君は英語を勉強する必要性を持っていた。
意訳:君は英語を勉強しなければならなかった(勉強する必要があった)。

否定文は「する必要はない」(不必要)

ここが学習者がもっとも混乱しやすいポイントです。
肯定文では「しなければならない」という意味ですが、否定文の no tener que + 不定詞 になると、「~する必要はない(しなくてもいい)」という意味に変化します。

deber の否定(禁止)とはまったく意味が異なるので注意が必要です。

No tenemos que apurarnos.
直訳:私たちは急ぐ必要を持っていない。
意訳:急がなくてもいいよ。

Hoy no tienen que ir a la escuela.
直訳:今日、彼らは学校へ行くこと(用事)を持っていない。
意訳:今日、彼らは学校へ行く必要がない。

No tenías que tomar un taxi.
直訳:君はタクシーに乗る必要を持っていなかった。
意訳:タクシーに乗る必要なんてなかったのに。

※文脈や言い方(とくに No を強く発音する場合)によっては、「(そんなこと)するんじゃないよ」という禁止に近いニュアンスで使われることもありますが、基本的には「不必要」を表すと覚えておきましょう。

動詞 tener の活用一覧は以下で確認できます。

動詞 tener「持つ、ある」の活用と意味【例文あり】

【hay que】一般的・社会的な義務「(人は)~するものだ」

Hay que + 不定詞 は、特定の誰かではなく、「世の中一般的にそうすべきである」「常識としてそうするものだ」という場合に使われます。

Hay は動詞 haber の非人称形(~がある)ですので、この文には「私」や「彼」といった特定の主語が存在しません。

Hay que cumplir las reglas.
直訳:ルールを守ることが(世の中に)存在する。
意訳:(人は)ルールを守らなければならない。

Al subir al colectivo, hay que pagar con monedas.
直訳:バスに乗る際、硬貨で支払うことが必要として存在する。
意訳:バスに乗るときは小銭で払わなきゃいけないよ。

※ラテンアメリカの一部(アルゼンチンなど)では、バスのことを autobús ではなく colectivo と呼ぶことがあります。

主語がない文での「hay que」の役割

否定文 no hay que + 不定詞 は、「~してはいけない(禁止)」または「~する必要はない(不必要)」の両方の意味になり得ますが、文脈で判断します。多くの場合、一般的な教訓として使われます。

No hay que pensar así.
直訳:そのように考えるべきことはない。
意訳:そんな風に考えなくていい(考えるべきではない)。

No hay que perder la esperanza.
直訳:希望を失うことは必要ない。
意訳:希望を捨ててはいけない。

独り言での「Hay que」

文法書では「一般的な義務」と習いますが、実際の会話では個人的な状況で使われることもあります。
とくに、自分自身に向かって「あ、これしなきゃ」と独り言のように再確認するシーンです。

Ay, hay que comprar sal.
直訳:あぁ、塩を買う必要がある。
意訳:あ、塩を買っておかなくちゃ。

これは「(家庭の在庫状況として)塩を買うタスクが存在している」という客観的な事実を述べることで、自分に行動を促しているニュアンスになります。

動詞 haber の活用についてはこちらを参考にしてください。

動詞 haber「~がある(いる)」の活用と意味【例文あり】

まとめ:ニュアンスの違いを整理しよう

最後に3つの違いを振り返りましょう。

  • Deber: 「~すべきだ」(義務・道徳)。否定形は「してはいけない(禁止)」。
  • Tener que: 「~する必要がある」(事情・用事)。否定形は「しなくていい(不必要)」。日常会話で一番使う。
  • Hay que: 「(一般的に)~するものだ」(常識・ルール)。主語がない時に使う。

まずは一番汎用性の高い tener que をしっかり使えるようになりましょう。その上で、アドバイスをするときは deberías、一般論を語るときは hay que と使い分けることで、表現力がぐっと上がります。

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