スペイン語で「もし~なら、〇〇だ」という文章を作るとき、日本語の「もし」と同じ感覚で単語を並べるだけでは、意図が正しく伝わらないことがあります。
なぜなら、スペイン語の「もしも文(条件文)」は、「その話が現実的なことなのか、それともただの妄想なのか」によって、使う文法モード(直説法か接続法か)が明確に変わるからです。
この記事では、日常会話で頻出する3つの「Si」のパターンを、ニュアンスの違いと共に解説します。
スペイン語の「もしも文」は大きく分けて3パターン
スペイン語の si を使った条件文は、話者の心理や実現可能性によって以下の3つに分類されます。
- 現実的な条件:「明日晴れたら~する」(実現する可能性が十分ある)
- 現在の妄想・仮定:「もし鳥だったら~なのに」(事実に反する、または可能性が極めて低い)
- 過去の後悔・仮定:「あの時勉強していたら~だったのに」(過去の事実に反する)
それぞれの形とニュアンスを詳しく見ていきましょう。
1. 実現可能な条件文(Si + 直説法)
「明日天気が良ければ~」や「暇だったら~」など、実現する可能性が十分にある条件文では、直説法を使います。
このパターンが会話でもっともよく使われます。
基本形:Si + 直説法現在形
Si の後ろ(条件節)には直説法現在形を置きます。未来のこと(明日の天気など)を話す場合でも、Si の直後は現在形になる点に注意してください。
※Si の後ろに未来形は使えません。
後半(帰結節)には、現在形、未来形、命令法などが来ます。
Si hace buen tiempo mañana, paseamos por el parque.
直訳:もし明日良い天気をつくるなら、私たちは公園を散歩する。
意訳:明日天気が良かったら、公園を散歩します。(現在形:習慣や予定)
Si gano en las carreras de caballos, te invitaré a comer sushi.
直訳:もし私が競馬で勝つなら、君に寿司をおごるつもりだ。
意訳:競馬で勝ったら、寿司をおごるよ。(未来形:意志)
Si tienes tiempo, llámame por teléfono.
直訳:もし君が時間を持つなら、私に電話しろ。
意訳:時間があったら電話して。(命令法:依頼)
確定した事実に基づく場合:Si + 過去形
「条件」というよりは、「(もし)〇〇だったのなら、当然~だ」のように、事実確認に基づく場合は、Si の後ろに過去形(点過去・線過去・現在完了)を使うことも可能です。
Si el avión salió a la hora establecida, llegará dentro de poco.
直訳:もし飛行機が定められた時間に出発したのなら、間もなく到着するだろう。
意訳:定刻通りに出発したのなら、もうすぐ着くはずだよ。
2. 現在の事実に反する仮定(Si + 接続法過去)
ここからが中級へのステップアップです。
「(今お金がないけど)もしあったらなぁ」や「(今は日本にいるけど)もし君の国にいたらなぁ」といった、現在の事実に反する仮定(妄想)には、接続法過去を使います。
また、宝くじに当たるなど「実現する可能性が極めて低い」と話者が思っている場合もこの形を使います。
- Si 節(もし~なら):接続法過去
- 帰結節(~なのに):可能法(過去未来)
Si tuviera dinero, viajaría a España.
直訳:もし私が(今)お金を持っていたら、スペインへ旅行するだろうに。
意訳:お金があればスペインへ旅行に行くのになぁ。(現実は持っていない)
Si en este momento estuvieras en tu país, ¿qué estarías haciendo?
直訳:もしこの瞬間、君が君の国にいたとしたら、何をしているだろうか?
意訳:今もし国に帰ってるとしたら、何してると思う?
Si supiera inglés, te podría aconsejar algo.
直訳:もし私が英語を知っていたら、君に何かアドバイスできるだろうに。
意訳:英語ができれば、君に何かアドバイスできるんだけど。(現実はできない)
【ニュアンス解説】直説法と接続法で変わる「話者の心理」
同じ「明日天気が良かったら」という文章でも、直説法を使うか、接続法過去を使うかで、話し手が「天気になる確率」をどう見積もっているかが分かります。
A: Si hace buen tiempo mañana, iré a la playa.(直説法)
B: Si hiciera buen tiempo mañana, iría a la playa.(接続法過去)
どちらも日本語にすると「明日天気がよかったら海に行く」となりますが、ニュアンスは大きく異なります。
- A(直説法):天気予報が晴れ、または晴れる可能性が高いと思っている。「晴れるだろうから、そしたら海に行こう」という前向きなニュアンスです。
- B(接続法過去):天気予報が雨、または晴れる見込みが薄いと思っている。「(多分無理だけど万が一)晴れたら海に行けるのになぁ」という諦めや願望のニュアンスが含まれます。
このように、話者の主観(実現可能性をどう見ているか)によって使い分けるのがポイントです。
3. 過去の事実に反する仮定(Si + 接続法過去完了)
「あの時~してたら、〇〇だったのに」という、過去の事実に反する仮定(後悔や検証)を表すパターンです。
現実はそうでなかったため、実際には起こらなかった結果を嘆いたり想像したりするときに使います。
- Si 節(もし~してたら):接続法過去完了(hubiera + 過去分詞)
- 帰結節(~だったのに):可能法(過去未来)完了(habría + 過去分詞)
Si hubiera sabido inglés, te habría podido aconsejar algo.
直訳:もし私が英語を知っていたのなら、君に何かアドバイスできただろうに。
意訳:あの時英語が分かっていたら、アドバイスできたかもしれないのに。(現実は分からず、アドバイスもできなかった)
Si me hubieras amado, no me habría ido de la ciudad.
直訳:もし君が僕を愛していたのなら、僕は街から去って行かなかっただろう。
意訳:君が僕を愛してくれていたら、街を出て行ったりしなかったよ。(現実は愛してくれず、街を出て行った)
Si me hubiera levantado temprano, habría llegado a tiempo.
直訳:もし私が早く起きていたなら、時間通りに到着していただろう。
意訳:早起きしてれば間に合ったのに。(現実は寝坊して遅刻した)
Si no hubiera aprendido castellano, no me habría gustado la música latina.
直訳:もし私がスペイン語を習得していなかったら、ラテン音楽を好きにはなっていなかっただろう。
意訳:スペイン語を覚えてなかったら、ラテン音楽を好きになることもなかっただろうね。
【応用】De + 不定詞を使った短縮表現
日常会話よりも書き言葉で見かけることが多いですが、Si を使わずに `De + 不定詞` で条件を表すこともできます。
De tener oportunidad, iría contigo.
(= Si tuviera oportunidad, iría contigo.)
直訳:機会を持つことによって、私は君と行くだろう。
意訳:チャンスがあれば一緒に行けるのに。
De haber estudiado, habría contestado mejor.
(= Si hubiera estudiado, habría contestado mejor.)
直訳:勉強していたことによって、より良く答えていただろう。
意訳:勉強していれば、もっとうまく答えられたのになぁ。
まとめ
スペイン語の「Si」は、公式のようにパターンを覚えてしまうのが習得の近道です。
- 可能性が高い・現実的
⇒ Si + 直説法現在(Si hace sol…) - 可能性が低い・今の妄想
⇒ Si + 接続法過去(Si tuviera dinero…) - もう変えられない過去の妄想
⇒ Si + 接続法過去完了(Si hubiera estudiado…)
まずは「もし明日晴れたら」「もし大金持ちなら」「もしあの時買っていれば」の3つの例文を、ご自身の状況に合わせて作ってみてください。

