スペイン語の前置詞の中から、H から T で始まる8つの前置詞「hacia, hasta, mediante, menos, según, sin, sobre, tras」について解説します。
これらは日常会話で頻繁に使われるものから、やや文章語的な硬い表現まで様々です。似た意味を持つ他の前置詞との「ニュアンスの違い」や「使い分け」に注目して学習しましょう。
hacia
「~の方へ」という方向や、「~頃」という大まかな時間を表します。
方向「~に向かって」(a との違い)
前置詞 a が目的地への「到達」を意識させるのに対し、hacia はあくまで「方向」を示します。必ずしも目的地に到着することを意味しません。
Nos dirigimos hacia el centro.
直訳:私たちは中心部の方へ向かった
意訳:私たちは街の中心部方面へ向かった
Ellos están subiendo hacia la cumbre.
直訳:彼らは頂上の方へ登っている
意訳:彼らは頂上を目指して登っている
¡Hacia adelante!
直訳:前方へ
意訳:前へ進め!(前進あるのみ)
大まかな場所・時間「~あたりに、~頃に」
場所や時間が特定できない、あるいは幅を持たせたい場合に使います。por(~あたり)や sobre(~頃)に近い用法です。
Hacia la Plaza de Armas hay varias cafeterías.
直訳:アルマス広場の方へ(行くと)いくつかのカフェがある
意訳:アルマス広場のあたりにカフェが何軒かあります
El concierto empezó hacia las diez.
直訳:コンサートは10時頃に始まった
意訳:コンサートは10時くらいに始まりました
hasta
「~まで」という到達点や限界を表します。反対語は desde です。
到達点・終点・限界「~まで」
空間的な移動の終点や、時間の期限を表します。
Te acompañaré hasta la estación.
直訳:駅まで君に付き添おう
意訳:駅まで送るよ
Antes trabajaba hasta las dos de la madrugada.
直訳:以前は深夜の2時まで働いていた
意訳:前は夜中の2時まで働いていました
¿Me rebajaría hasta cien pesos?
直訳:100ペソまで私に値下げしてくれますか?
意訳:100ペソまでまけてくれませんか?
挨拶での用法
「(次に会う時)まで」という意味で、別れの挨拶として頻繁に使われます。
¡Hasta mañana!
直訳:明日まで
意訳:また明日!
¡Hasta luego!
直訳:その後まで
意訳:また後で!(またね!)
hasta que + 直説法・接続法「~するまで」
「~という時まで」と文をつなげる場合、事実として完了したことには直説法、未来のことや不確定なことには接続法を使います。
La niña lloró hasta que su madre compró este juguete.
直訳:少女は母親がこのおもちゃを買うまで泣いた
意訳:女の子はお母さんがおもちゃを買ってくれるまで泣き続けた
※「買った」のは過去の事実なので直説法
La niña llora hasta que su madre compre este juguete.
直訳:少女は母親がこのおもちゃを買うまで泣く
意訳:その子は、お母さんがおもちゃを買ってくれるまで泣き止まない
※「買う」のはこれからのこと(未完了)なので接続法
強意「~さえ、~すら」
副詞的に「~でさえも(incluso)」の意味で使われることがあります。
Hasta los niños pueden resolver este problema.
直訳:子供たちまでこの問題を解決できる
意訳:子供でさえこの問題が解ける
mediante
「~を通じて、~によって」という手段を表します。
仲介・手段「~を通じて」
意味は con(~で)や a través de(~を通じて)に近いですが、mediante はニュースや契約書などで使われる硬い表現(書き言葉)です。日常会話ではあまり使われません。
He comprado este carro mediante la agencia.
直訳:代理店を通じてこの車を買った
意訳:代理店の仲介でこの車を購入しました
Se ha llegado a un acuerdo mediante su colaboración.
直訳:彼の協力を通じて合意に達した
意訳:彼の協力のおかげで合意に至った
menos (excepto, salvo)
「~より少なく」という比較の意味以外に、「~を除いて」という除外の意味を持ちます。excepto や salvo もほぼ同じ意味で使われます。
除外「~を除いて」
Todos han llegado menos tú.
直訳:君より少なく全員が到着した
意訳:君以外は全員到着したよ
Le puedo visitar cualquier día menos mañana.
直訳:明日を除いてどんな日でも彼を訪問できる
意訳:明日以外ならいつでも伺えます
時間表現「~分前」
時刻を言う際に、「(次の時間)引く(分数)」という形で使います。
Son las diez menos cinco.
直訳:5分少ない10時です
意訳:10時5分前です(=9時55分)
※ラテンアメリカの一部の国では menos を使わず、faltan … para … という表現を好む地域もあります。時間の表現について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
【スペイン語】時間の言い方・聞き方を完全ガイド
según
「~によると」という根拠や、「~次第で」という対応関係を表します。
根拠「~によれば」
情報源を示す際によく使われます。
Según el pronóstico del tiempo, va a nevar mañana.
直訳:天気予報によれば、明日は雪が降る
意訳:天気予報によると明日は雪だそうだ
Según dicen, se divorciarán pronto.
直訳:言うところによれば、彼らはすぐに離婚するだろう
意訳:噂によると、あの二人はもうすぐ離婚するらしい
基準・対応「~に従って、~次第で」
depende de(~による、~次第だ)と言い換えられる用法です。
Preparé el plato según la receta.
直訳:レシピに従って皿(料理)を準備した
意訳:レシピ通りにその料理を作りました
Lo compro según el precio.
直訳:価格に応じてそれを買う
意訳:値段次第では買います
sin
「~なしで」という欠如を表します。反対語は con です。
欠如「~なしで」
名詞だけでなく、動詞の原形(不定詞)を続けて「~せずに」と表現することもできます。
Estoy sin dinero.
直訳:私はお金なしでいる
意訳:今、持ち合わせがないんだ
Agua sin gas, por favor.
直訳:ガスなしの水をください
意訳:ミネラルウォーター(炭酸なし)をください
※レストランでの必須フレーズです。
Ella salió sin comer.
直訳:彼女は食べることなしに出かけた
意訳:彼女は食事をせずに出かけた
条件「~がないと」
Parecerá más inteligente sin abrir la boca.
直訳:口を開くことなしには、より賢く見えるだろう
意訳:黙っていればもっと賢く見えるのに
覚えておきたい慣用句
接続詞のように文をつなぐ重要な表現です。
Sin duda es la mejor opción.
直訳:疑いなしに、それは最良の選択肢だ
意訳:間違いなくそれがベストだね
Sin embargo
意訳:しかしながら(接続詞的に使用)
sobre
「~の上に」という位置だけでなく、「~について」という主題を表す重要な前置詞です。反対語は bajo です。
位置「~の上に」(接触・非接触)
何かの真上にある状態を示します。物理的に接触している場合も、浮いている場合も使えます。
Los libros están sobre la mesa.
直訳:本はテーブルの上にある
意訳:本がテーブルの上に置いてある(接触)
El avión vuela sobre el pueblo.
直訳:飛行機が村の上を飛ぶ
意訳:飛行機が村の上空を飛んでいる(非接触)
主題「~について」
de にも「~について」という意味はありますが、sobre の方がより「そのテーマを専門的に、詳しく」というニュアンスを持ちます。
No les gusta hablar sobre política.
直訳:彼らは政治について話すのが好きではない
意訳:彼らは政治の話をするのを嫌がる
概数「大体、およそ、~頃」
数や時間の前につけて「約~」を表します。
Nos quedamos sobre las ocho.
直訳:8時頃に会おう
意訳:8時くらいに待ち合わせね
※ラテンアメリカでは como a las ocho と言うことも多いです。
【重要】sobre todo「とりわけ、特に」
会話でも文章でも非常に頻繁に使われる熟語です。
Me gusta la comida latina, sobre todo los tacos.
直訳:ラテンの食べ物が好きだ、すべての上のタコス
意訳:ラテン料理、とりわけタコスが大好きです
tras
「~の後ろに」「~の後に」を表します。意味は detrás de(場所)や después de(時間)と同じですが、tras はより文語的で、書き言葉やニュースで好まれます。
場所・時間「~の後ろに、~の後に」
Vi a una señora tras la puerta.
直訳:ドアの後ろに婦人を見た
意訳:ドアの陰に女性がいるのが見えた
Tras haber escuchado las explicaciones, partimos.
直訳:説明を聞いた後、私たちは出発した
意訳:説明を受けたのち、我々は出発した
Los niños corren tras el perro.
直訳:子供たちは犬の後ろを走る
意訳:子供たちが犬を追いかけ回している
まとめ
今回紹介した前置詞は、日常会話の質を一段階上げるために欠かせないものばかりです。
- hacia(方向)と a(到達点)の違い
- hasta を使った挨拶
- según の「~次第で」という用法
- 便利な熟語 sobre todo(とりわけ)
これらを意識して使い分けることで、より正確で豊かな表現ができるようになります。

