日本語で「〜している」と言うとき、すべてをスペイン語の「現在進行形(estar + 現在分詞)」に訳していませんか?
実は、スペイン語学習においてこの「日本語の感覚」が誤用を生む大きな原因の一つです。また、ラテンアメリカの日常会話では、教科書的な estar だけでなく、andar や ir を使った進行形が頻繁に登場します。
この記事では以下の3点を解説します。
- 現在進行形の基本と作り方
- 日本人が間違えやすい「進行形にしてはいけない動詞」
- 表現力を高める「estar以外の」5つの進行形表現
進行形の基本形:Estar + 現在分詞
スペイン語の進行形の最も基本的な形は、「動詞 estar + 現在分詞」です。
この形を作るには、まず動詞 estar を主語に合わせて「直説法現在形」に活用させます。
Estarの活用(直説法現在)
| yo | estoy |
| tú (vos) | estás |
| él, ella, usted | está |
| nosotros | estamos |
| ellos, ellas, ustedes | están |
現在分詞は、動詞の語尾を以下のように変化させます。
- ar動詞 → -ando
- er, ir動詞 → -iendo
※不規則な変化をする現在分詞(pidiendo, durmiendoなど)については、別途「現在分詞の活用ルール」を確認してください。
スペイン語の現在進行形の使い方
Estarを使った現在進行形には、主に2つの使い方があります。
1. 今この瞬間に起こっていること
「今まさに〜しているところだ」という、ライブ感を伴う動作を表します。
¿Qué estás haciendo?
直訳:君は(今)何をしている状態ですか?
意訳:何してるの?
Julián está hablando por teléfono.
直訳:フリアンは電話で話している状態です。
意訳:フリアンは今、電話中です。
2. 一時的な習慣・繰り返し
普段からの恒久的な習慣ではなく、「(最近)〜している」「(今だけ)〜に通っている」という、一時的な期間に行われている習慣を表す場合に使われます。
Últimamente estoy yendo al gimnasio.
直訳:最近、私はジムに行っている状態です。
意訳:ここ最近、ジムに通っているんです。
【重要】日本人が間違えやすい「進行形にできない動詞」
ここが学習者が最もつまずきやすいポイントです。
日本語では「〜している」と言えても、スペイン語では進行形にせず「現在形」で表すべき動詞(状態動詞)があります。
以下の動詞は、「動作」ではなく「状態」を表すため、原則として進行形にはしません。
- tener(持っている)
- conocer(知っている・面識がある)
- saber(知っている・知識がある)
- querer(愛している・欲している)
誤用の例と正しい表現
× 「車を持っています」
(誤)Estoy teniendo un coche.
(正)Tengo un coche.
× 「彼を知っています」
(誤)Lo estoy conociendo.
(正)Lo conozco.
日本語の「している」に引きずられず、その動詞が「動き(アクション)」なのか「状態(ステータス)」なのかを考える癖をつけましょう。
表現の幅を広げる!Estar以外の現在進行形
スペイン語には estar 以外にも現在分詞を伴って進行形を作る動詞があります。
これらを使い分けることで、「どのように継続しているか」「動作の方向性」といった細かいニュアンスを表現できます。
1. Seguir / Continuar(継続:まだ〜している)
「以前から続いていて、今もまだ終わっていない」ことを強調します。日本語では「まだ〜している」「〜し続けている」と訳すと自然です。
Él sigue hablando.
直訳:彼は話し続けている。
意訳:彼はまだ喋っているよ。
¿Continúas viviendo en esta ciudad?
直訳:君はこの街に住むことを継続していますか?
意訳:まだこの街に住んでいるの?
2. Llevar(期間:〜してこれだけの時間が経つ)
動作そのものよりも、その動作が継続している「期間」に焦点を当てる表現です。「Llevar + 期間 + 現在分詞」の語順でよく使われます。
Llevo cinco años estudiando español.
直訳:私はスペイン語を勉強して5年を持っていきます(過ごしています)。
意訳:スペイン語を勉強して5年になります。
¿Cuánto tiempo llevas esperando?
直訳:どのくらいの時間を待ち続けていますか?
意訳:どれくらい待った?
3. Ir(漸進:これから〜していく)
現在から未来に向かって、「徐々に〜していく」「〜しつつある」という進展・変化のニュアンスを含みます。
El paciente se va recuperando.
直訳:患者は(これから)回復していきます。
意訳:患者は快方に向かっている(徐々に回復している)。
Vamos viendo.
直訳:私たちは(これから)見ていきます。
意訳:(状況を見ながら)おいおい考えていきましょう/様子を見ましょう。
4. Venir(蓄積:今まで〜してきた)
Ir とは逆に、過去から現在に向かって「(今日まで)ずっと〜してきた」「積み重ねてきた」というニュアンスを持ちます。
Vengo pensando en eso desde ayer.
直訳:私は昨日からそのことについて(こちらに向かって)考え続けてきました。
意訳:昨日からずっとそのことについて考えていたんだ。
Te lo vengo diciendo.
直訳:君にそれを(過去から何度も)言い続けてきた。
意訳:だから前からそう言ってるじゃないか。
5. Andar(不特定:あちこちで〜して回る)
ラテンアメリカ(特にメキシコやコロンビアなど)で頻繁に使われる表現です。
Estar に比べて「動き」があり、場所が定まらず「あちこちで〜する」、あるいは「なんとなく〜している」という漠然とした継続を表します。
Ando buscando mis llaves.
直訳:私は鍵を探して歩き回っています。
意訳:鍵を探してるんだけど(見つからない)。
Ellos andan diciendo mentiras.
直訳:彼らは嘘を言って回っています。
意訳:あいつら、嘘ばっかり言いふらしてるんだよ。
まとめ
スペイン語の現在進行形は、単に「estar + -ando / -iendo」だけではありません。
- 基本は estar(今している)
- 未完了・継続なら seguir / continuar(まだしている)
- 期間の強調なら llevar(〜して◯年になる)
- 未来への変化なら ir(〜していく)
- 過去からの蓄積なら venir(〜してきた)
- 動き回る・漠然とした継続なら andar(〜して回る)
そして何より重要なのは、「知っている」「持っている」などの状態動詞は進行形にしないということです。
これらの動詞を使い分けることで、あなたのスペイン語はより立体的で、ネイティブスピーカーの感覚に近いものになります。ぜひ実際の会話で試してみてください。

