スペイン語の動詞 creer は「信じる」「思う」という意味を持ち、日常会話で頻繁に使用される重要単語です。
活用において特に注意が必要なのは、母音に挟まれた「i」が「y」に変化する不規則変化(例:creyó, creyendo)です。また、意味の面では「考える(pensar)」との使い分けや、「~だと思わない」と否定する際の接続法の使用ルールなど、学習者がつまずきやすいポイントがいくつか存在します。
この記事では、creer のすべての活用パターンを網羅した表とともに、正確な意味と使い方、そしてラテンアメリカの会話で役立つ定型表現を解説します。
スペイン語の動詞 creer の活用一覧
creer は、点過去や現在分詞などで語幹の「i」が母音に挟まれるために「y」へと変化する不規則活用が見られます。
分詞(現在分詞・過去分詞)
現在分詞は「creiendo」ではなく、i が y に変わり creyendo となります。過去分詞にはアクセント記号が必要です。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| 現在分詞 | creyendo |
| 過去分詞 | creído |
直説法現在形の活用
規則変化ですが、ラテンアメリカの一部(アルゼンチンやウルグアイなど)で使われる vos(二人称単数)にはアクセント記号がつきます。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | creo |
| tú / vos | crees / creés |
| él / ella / usted | cree |
| nosotros / nosotras | creemos |
| vosotros / vosotras | creéis |
| ellos / ellas / ustedes | creen |
直説法点過去形の活用
3人称単数(él/ella/usted)と3人称複数(ellos/ellas/ustedes)において、i が y に変化します。その他の人称でも i にアクセント記号が付く点に注意してください。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | creí |
| tú | creíste |
| él / ella / usted | creyó |
| nosotros / nosotras | creímos |
| vosotros / vosotras | creísteis |
| ellos / ellas / ustedes | creyeron |
直説法線過去形の活用
規則活用です。すべての活用において i にアクセント記号がつきます。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | creía |
| tú | creías |
| él / ella / usted | creía |
| nosotros / nosotras | creíamos |
| vosotros / vosotras | creíais |
| ellos / ellas / ustedes | creían |
直説法未来形の活用
規則活用です。不定詞 creer の後ろに語尾を付けます。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | creeré |
| tú | creerás |
| él / ella / usted | creerá |
| nosotros / nosotras | creeremos |
| vosotros / vosotras | creeréis |
| ellos / ellas / ustedes | creerán |
可能法(過去未来)の活用
規則活用です。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | creería |
| tú | creerías |
| él / ella / usted | creería |
| nosotros / nosotras | creeríamos |
| vosotros / vosotras | creeríais |
| ellos / ellas / ustedes | creerían |
命令法の活用
肯定命令と否定命令で形が異なります。否定命令の場合は接続法現在形と同じ形をとります。
| 主語 | 肯定命令 | 否定命令 |
|---|---|---|
| tú | cree | no creas |
| vos | creé | no creas |
| usted | crea | no crea |
| nosotros | creamos | no creamos |
| vosotros | creed | no creáis |
| ustedes | crean | no crean |
接続法現在形の活用
規則活用です。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | crea |
| tú / vos | creas / creas |
| él / ella / usted | crea |
| nosotros / nosotras | creamos |
| vosotros / vosotras | creáis |
| ellos / ellas / ustedes | crean |
接続法過去形(ra形)の活用
直説法点過去の3人称複数形(creyeron)をベースに作るため、ここでも y が現れます。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | creyera |
| tú | creyeras |
| él / ella / usted | creyera |
| nosotros / nosotras | creyéramos |
| vosotros / vosotras | creyerais |
| ellos / ellas / ustedes | creyeran |
動詞 creer の基本的な意味と使い方
信じる・信用する(creer / creer en)
人や事柄を「信じる」という意味です。「神」や「宗教」、「抽象的な概念(民主主義など)」を信じる場合は、前置詞 en を伴います。
Lo creo, ya que lo dices tú.
直訳:私はそれを信じる、君がそれを言うのだから。
意訳:君がそう言うなら、それを信じるよ。
Ellos creen en Dios.
直訳:彼らは神において信じる。
意訳:彼らは神(の存在)を信じている。
~だと思う(意見・判断)
自分の意見や判断を述べるときに使います。肯定文の場合、従属節(que以下の文)の動詞は「直説法」になります。
Creo que él llegará a tiempo.
直訳:私は思う、彼が時間通りに着くと。
意訳:彼は時間通りに着くと思います。
Creo que va a llover.
直訳:私は思う、雨が降るだろうと。
意訳:雨が降ると思います。
~だと思わない(否定文と接続法)
「~だと思わない」と文全体を否定する場合、従属節の内容は「不確実」なものとして扱われるため、動詞は「接続法」にする必要があります。
No creo que él llegue a tiempo.
直訳:私は思わない、彼が時間通りに着く(接続法)とは。
意訳:彼が時間通りに着くとは思いません。
No creo que llueva.
直訳:私は思わない、雨が降る(接続法)とは。
意訳:雨は降らないと思います。
【補足】接続法を使わずに否定の意を表すテクニック
接続法の活用に自信がない場合や、会話でとっさに活用が出てこない場合は、「思う(Creo)」を肯定にし、従属節の中身を否定形にすることで、ほぼ同じ意味を「直説法」で伝えることができます。
Creo que no va a llover.
直訳:私は思う、雨が降らないだろうと。
意訳:雨は降らないと思います。
これなら文法的に直説法を使えるため、初級者の方にはおすすめの表現方法です。
【再帰動詞】creerse(自分を~だと思う、信じ込む)
再帰動詞 creerse になると、「(根拠なく)信じ込む」や「自分を~だと思っている(うぬぼれる)」といったニュアンスが含まれることがあります。
Se cree un artista.
直訳:彼は自分自身をアーティストだと信じている。
意訳:彼はアーティスト気取りだ。
No me lo creo.
直訳:私は自分自身にそれを信じさせない。
意訳:まさか(信じられない)。
【重要】「Creo que」と「Pienso que」の違いと使い分け
日本語ではどちらも「~だと思う」と訳されますが、スペイン語の creer と pensar には、思考のプロセスに明確な違いがあります。
Creo que は「私の心はこう言っている」、Pienso que は「私の脳はこう計算した」という違いです。
結論から言うと、日常会話で自分の意見を言うときは「Creo que」を使うのが自然です。
語源(ラテン語)でわかる!「心」と「頭(脳)」の違い
この2つの単語は、ラテン語の語源を知ると違いがハッキリします。
- Creer(語源:心臓を置く):自分の心をそこに置く=「信じる」「直感的に判断する」
- Pensar(語源:天秤にかける):重さを量る=「分析する」「頭を使って検討する」
つまり、以下のようなイメージの違いがあります。
| 表現 | イメージ | ニュアンス |
|---|---|---|
| Creo que | 心 | 「私の感覚・直感ではこう思う」 (スタンス、判断、信仰) |
| Pienso que | 頭(脳) | 「情報を分析した結果こう考える」 (推論、検討、計算) |
具体的な使い分けの例
例えば、「彼は無実だと思う」と言う場合を比べてみましょう。
Creo que es inocente.
ニュアンス:私の感覚として、彼を信じている。(日常会話でよく使う)
Pienso que es inocente.
ニュアンス:状況証拠や情報を分析した結果、彼は無実だという計算になる。(議論や少し硬い表現)
初心者は「Creo que」を使えば間違いなし
「明日晴れると思う」「いいアイデアだと思う」「君ならできると思う」といった日常の会話は、分析よりも「あなたの気持ち・判断」を伝える場面がほとんどです。
迷ったらまずは Creo que を使うようにしましょう。Pienso que は「熟考した結果」を伝える、少し理屈っぽい響きになると覚えておいてください。
ネイティブが使う creer の定型表現
中南米をはじめとするスペイン語圏の日常会話では、creer を使った相槌やリアクションが頻繁に使われます。
¡Ya lo creo!(その通り!)
直訳すると「私はもうそれを信じている」ですが、相手の意見に対する「強い同意」を表します。
¡Ya lo creo!
直訳:私はすでにそれを信じる。
意訳:その通りだね!/もちろんさ!
¡No te creo!(まさか!)
直訳は「君を信じない」ですが、驚きのニュースを聞いた時などの「うそでしょ!」「信じられない!」というリアクションとして使われます。
¡No te creo!
直訳:私は君を信じない。
意訳:うそでしょ!/信じられない!/マジで?
まとめ
スペイン語の動詞 creer について解説しました。ポイントを整理します。
- 活用:直説法点過去、現在分詞、接続法過去などで「i」が「y」に変わる不規則変化に注意。
- 意味:基本は「信じる」「(判断として)思う」。
- 文法:「No creo que ~」の形では、後ろに接続法を伴う。
- Pensarとの違い:Creer は「判断・意見」、Pensar は「思考・検討」。
まずは規則活用と異なる点過去形や現在分詞の形を覚え、「Creo que + 直説法」で自分の意見を言えるように練習してみましょう。

