スペイン語の動詞 oír のすべての活用と基本的な意味、そして学習者が迷いやすい escuchar との違いについて解説します。
oír は「聞こえる」という意味を持つ基本単語ですが、不規則活用が非常に多いため、正確に覚えるには少しコツが必要です。また、ラテンアメリカの一部の地域では、教科書的な定義とは異なる使い方がされることもあります。
この記事では、単なる暗記ではなく「なぜそのような形になるのか」というルールの解説に加え、現地で実際に使われているリアルな表現もあわせて紹介します。
スペイン語の動詞 oír の活用
oír の活用を覚える際、ひとつずつ丸暗記する前に以下の2つの発音ルールを理解しておくと、不規則変化の理由が腑に落ち、定着しやすくなります。
- 「i」が「y」に変わるルール:
母音に挟まれた、アクセントのない「i」は「y」に変化します。
(例:o-i-endo → oyendo) - アクセント記号「í」が付くルール:
「i」に強勢(アクセント)がある場合、他の母音と融合しないようにアクセント記号を付けて独立させます。
(例:o-i-do → oído)
分詞(現在分詞・過去分詞)
現在分詞は母音に挟まれた「i」が「y」になるルールが適用されます。
| 種類 | 活用 |
|---|---|
| 現在分詞 | oyendo |
| 過去分詞 | oído |
直説法現在形の活用
1人称単数(yo)のみ「go」で終わる不規則変化です。その他は「y」への変化、およびアクセント記号に注意が必要です。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oigo |
| tú / vos | oyes / oís |
| él / ella / usted | oye |
| nosotros / nosotras | oímos |
| vosotros / vosotras | oís |
| ellos / ellas / ustedes | oyen |
直説法点過去形の活用
3人称(単数・複数)で「y」への変化が起こります。その他の人称では、すべての「i」にアクセント記号が付きます。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oí |
| tú | oíste |
| él / ella / usted | oyó |
| nosotros / nosotras | oímos |
| vosotros / vosotras | oísteis |
| ellos / ellas / ustedes | oyeron |
直説法線過去形の活用
ir動詞の規則変化ですが、すべての「i」にアクセント記号が必要です。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oía |
| tú | oías |
| él / ella / usted | oía |
| nosotros / nosotras | oíamos |
| vosotros / vosotras | oíais |
| ellos / ellas / ustedes | oían |
直説法未来形の活用
未来形は規則変化ですが、語尾にアクセントが移動するため、原形 oír にあった「i」のアクセント記号が消失します。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oiré |
| tú | oirás |
| él / ella / usted | oirá |
| nosotros / nosotras | oiremos |
| vosotros / vosotras | oiréis |
| ellos / ellas / ustedes | oirán |
可能法(過去未来)の活用
未来形と同様に、原形の「i」からアクセント記号が消失します。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oiría |
| tú | oirías |
| él / ella / usted | oiría |
| nosotros / nosotras | oiríamos |
| vosotros / vosotras | oiríais |
| ellos / ellas / ustedes | oirían |
命令法の活用
肯定命令の tú と vos の形が異なります。否定命令はすべての主語で接続法現在形と同じ形を用います。
| 主語 | 肯定命令 | 否定命令 |
|---|---|---|
| tú | oye | no oigas |
| vos | oí | no oigás |
| usted | oiga | no oiga |
| nosotros | oigamos | no oigamos |
| vosotros | oíd | no oigáis |
| ustedes | oigan | no oigan |
接続法現在形の活用
直説法現在1人称単数(oigo)の語幹 oig- をベースに活用します。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oiga |
| tú / vos | oigas / oigás |
| él / ella / usted | oiga |
| nosotros / nosotras | oigamos |
| vosotros / vosotras | oigáis |
| ellos / ellas / ustedes | oigan |
接続法過去形(ra形)の活用
直説法点過去3人称複数(oyeron)の語幹 oyer- をベースに活用します。
| 主語 | 活用 |
|---|---|
| yo | oyera |
| tú | oyeras |
| él / ella / usted | oyera |
| nosotros / nosotras | oyéramos |
| vosotros / vosotras | oyerais |
| ellos / ellas / ustedes | oyeran |
動詞 oír の意味と基本的な使い方
oír は主に、聴覚によって音や声を感知することを表します。日常会話での具体的な使用例を見ていきましょう。
(自然に)聞こえる・耳に入る
意識して聞こうとしなくても、自然と耳に入ってくる音に対して使われます。
He oído una voz de mujer.
直訳:私は女性の声を(今までに)聞いた。
意訳:女性の声がした。
Las paredes son tan finas que oigo a los vecinos hablar.
直訳:壁がとても薄いので、隣人たちが話すのを聞く。
意訳:壁がとても薄いので、隣の人の話し声が聞こえる。
No te oigo bien.
直訳:君のことを良く聞くことができない。
意訳:(電話などで)声がよく聞こえません。
【注意喚起】ねぇ、ちょっと、おい
命令法を使い、相手の注意を引くための呼びかけとして非常に頻繁に使われます。
¡Oiga, por favor!
直訳:聞いてください、お願いします。
意訳:すみません、お願いします!(レストランなどで店員を呼ぶとき)
¡Oye! ¿Qué vas a hacer hoy?
直訳:聞け!今日何をするつもり?
意訳:ねぇ、今日は何する予定?(友人などへの呼びかけ)
【ラテンアメリカ】文末の確認「〜だよね?」「わかった?」
ラテンアメリカ、特にコロンビアやカリブ海沿岸地域では、文末に ¿Oíste? を付けて「わかった?」「いいね?」と念を押す表現がよく使われます。
No vayas a llegar tarde, ¿oíste?
直訳:遅れて到着しないように、聞いた?
意訳:遅刻しないでよ、わかった?
【慣用句】耳を貸さない(hacer oídos sordos)
直訳すると「聞こえない耳を作る」となり、都合の悪いことや批判を無視するという意味の慣用句です。
El gobierno hizo oídos sordos a las protestas.
直訳:政府は抗議に対して聞こえない耳を作った。
意訳:政府は抗議の声に耳を貸さなかった。
oír と escuchar の違い【ラテンアメリカ事情】
学習者が最も悩みやすいのが、oír(聞こえる)と escuchar(聴く)の使い分けです。
基本的な定義の違い(聞こえる vs 聴く)
標準的な文法定義では、以下のように区別されます。
- oír:意識せずに自然と耳に入ってくる。
- escuchar:意識して耳を傾ける。
ラテンアメリカでは「聞こえる」も escuchar ?
上記の定義は主にスペインのスペイン語において厳格です。
一方、ラテンアメリカの多くの地域では、本来 oír を使うべき「(無意識に)聞こえる」という状況でも、escuchar を使う傾向が強くあります。
¿Escuchaste que muchos perros ladraban anoche?
直訳:昨晩たくさんの犬が吠えていたのを聴いた?
意訳:昨晩、たくさんの犬が吠えてたの聞こえた?
このように、「自然と聞こえてきた」音に対しても escuchar が代用されることが一般的です。そのため、ラテンアメリカのスペイン語を学ぶ際は、oír の使用頻度がスペインに比べてやや低いことを認識しておくと良いでしょう。
電話の「もしもし」について
古い教材やスペインの一部の地域では、電話の応答に ¡Oiga! を使うと紹介されることがありますが、現在のラテンアメリカでは一般的ではありません。
メキシコでは Bueno、コロンビアやペルーなど多くの国では Aló、あるいは単に Hola が使われます。ラテンアメリカで電話に出る際に「Oiga」と言うと、相手に対して威圧的あるいは不自然に響く可能性があるため注意しましょう。
まとめ
動詞 oír は不規則変化が多い動詞ですが、「母音間の i は y になる」「アクセントのある i には記号が付く」という原則を押さえれば整理しやすくなります。
意味としては「(自然に)聞こえる」が基本ですが、ラテンアメリカではその役割を escuchar が担うことも多く、oír は「Oye(ねぇ)」や「¿Oíste?(わかった?)」といった定型表現での活躍が目立ちます。
地域による使い方の違いを理解し、シチュエーションに合わせて使い分けてみてください。

