スペイン語で「たぶん」「おそらく」という推量を表す時、多くの学習者が直面する壁があります。それは、「後に続く動詞は直説法なのか、接続法なのか」という問題です。
実は、使う単語や話し手の「確信度」によって、モード(法)を使い分ける明確なルールが存在します。
この記事では、スペイン語学習者が迷いやすい「たぶん」の表現を整理し、ラテンアメリカの日常会話で頻出するリアルな表現も含めて解説します。
そもそも「たぶん」は直説法か接続法か?
結論から言うと、「話し手がその内容をどれくらい事実だと思っているか(確信度)」によって直説法と接続法が変わります。
多くの副詞(Quizá, Tal vezなど)は、直説法と接続法の両方を伴うことができますが、そこには明確なニュアンスの違いがあります。
- 直説法を使う場合:確信度が高い。「ほぼ事実だと思っている」または「事実として伝えたい」時。
- 接続法を使う場合:確信度が低い。「疑いがある」「可能性の話である」というニュアンスを強めたい時。
また、文法的な鉄則として以下のルールを覚えておきましょう。
【配置のルール】
「たぶん」を表す副詞が文末に来る場合は、必ず直説法を使います。
それでは、具体的な単語ごとのルールと使い方を見ていきましょう。
【ルール1】直説法・接続法の「両方」が使える表現
このグループの単語は、後に直説法を置くか接続法を置くかで、話し手の「自信のなさ」を調整できます。
Quizá / Quizás(たぶん)
最も一般的な表現です。Quizá と Quizás に意味の違いはありませんが、続く単語が母音で始まる場合は Quizás が好まれる傾向があります。
直説法を使う場合(確信度:高)
Quizá voy al cine mañana.
直訳:たぶん明日、私は映画館に行く。
意訳:たぶん明日は映画館に行くよ。(行くつもりである)
接続法を使う場合(確信度:低)
Quizá vaya al cine mañana.
直訳:もしかしたら明日、私は映画館に行くかもしれない。
意訳:明日は映画館に行くかもしれないなぁ。(まだ決めていない)
文末に置く場合(必ず直説法)
Voy al cine mañana, quizá.
直訳:私は映画館に行く、明日。たぶん。
意訳:明日は映画館に行くよ、たぶんね。
Tal vez(たぶん)
Quizá と同様によく使われます。使い分けのルールも同じです。
Tal vez es verdad.(直説法)
直訳:たぶんそれは真実だ。
意訳:たぶん本当のことだろう。(そう思っている)
Tal vez sea verdad.(接続法)
直訳:もしかするとそれは真実かもしれない。
意訳:ひょっとしたら本当かもしれないね。(疑っている)
Posiblemente / Probablemente(おそらく)
これらは英語の “Possibly” や “Probably” に相当し、少し硬い表現や書き言葉、ニュースなどでよく使われます。
Probablemente no vendrá José.(直説法)
直訳:おそらくホセは来ないだろう。
意訳:たぶんホセは来ないと思うよ。
Probablemente no venga José.(接続法)
直訳:おそらくホセは来ないかもしれない。
意訳:恐らくホセは来ないんじゃないかな。
Seguramente(きっと〜だろう)
「確実な」を意味する形容詞 Seguro から来ていますが、副詞の Seguramente は「100%確実」ではなく、「高い確率での推量(十中八九そうだろう)」を表します。
Seguramente saldré esta tarde.(直説法)
直訳:きっと今日の午後は出かける。
意訳:今日の午後はたぶん出かけるよ。
Seguramente salga esta tarde.(接続法)
直訳:おそらく今日の午後は出かけるかもしれない。
意訳:今日の午後は出かけることになるかな。
なお、形容詞(seguro)として使う場合は意味が異なるため注意が必要です。
- Es seguro que viene.(彼女が来るのは確実だ / 100%)
- Seguramente viene.(彼女はきっと来るだろう / 推量)
【ルール2】「接続法」のみを使う表現
「〜という可能性がある」という表現は、事象が確定していないため、文法的に接続法を要求します。
Puede que / Puede ser que(〜かもしれない)
「それはあり得る」という意味の Puede ser から派生した表現です。非常に頻繁に使われます。
Puede que vaya al cine.
直訳:私が映画館に行くことはあり得る。
意訳:映画館に行くかもしれない。
Puede que ella no lo sepa.
直訳:彼女がそれを知らないことはあり得る。
意訳:彼女はそのことを知らないかもしれないね。
Es posible que / Es probable que(〜の可能性がある)
「〜ということは可能だ(あり得る)」という非人称構文です。客観的な可能性を述べる際に使います。
Es posible que llueva hoy.
直訳:今日雨が降ることは可能だ。
意訳:今日は雨が降る可能性がある。
Es probable que lleguen tarde.
直訳:彼らが遅れて到着することは蓋然性が高い。
意訳:彼らはたぶん遅れて来るでしょう。
⚠️ 注意:「que」がない場合
que がなく、直接動詞の原形(不定詞)が続く場合は、「たぶん」という推量の意味ではなく、単に「〜することは可能だ(できる)」という意味になります。
- Es posible viajar.(旅行することは可能だ/旅行できる)
【ルール3】「直説法」のみを使う表現
文法的には推量ですが、習慣的に直説法と共に使われる表現です。
A lo mejor(たぶん)
会話で非常によく使われる表現です。意味は Quizá と同じですが、必ず直説法を使います。接続法について難しく考えたくない場合、この表現は非常に便利です。
A lo mejor me quedo en casa.
直訳:たぶん私は家に残る。
意訳:たぶん家にいると思う。
A lo mejor no lo sabe.
直訳:たぶん彼はそれを知らない。
意訳:彼はそのことを知らないんじゃないかな。
Capaz / Capaz que(ひょっとしたら〜かも)
これは教科書ではあまり扱われませんが、ラテンアメリカ(特にアルゼンチン、ウルグアイ、中米など)の日常会話では頻出の表現です。A lo mejor と同じように、会話では直説法を伴って使われることが非常に多いです。
Capaz que no voy.
直訳:ひょっとしたら私は行かない。
意訳:たぶん行かないかも。
¡Capaz que sí!
直訳:ひょっとしたらそう!
意訳:そうかもね!
※地域や文脈によっては接続法をとることもありますが、ラテンアメリカの口語では「Capaz que + 直説法」のリズムが一般的です。
【番外編】Creo que は「たぶん」なのか?
Creo que(私は〜だと思う)も推量を表しますが、これは「私の意見・思考」を表すフレーズであり、肯定文では直説法を使います。
日本語の「たぶん映画館に行く」は、スペイン語の発想では「映画館に行くと思う」と変換できるため、Creo que は「たぶん」の代用として最も使いやすい表現の一つです。
Creo que voy al cine.
直訳:私は映画館に行くと思う。
意訳:たぶん映画館に行くよ。
ただし、否定文(No creo que…)になると、後ろは接続法になるので注意してください。
まとめ:表現ごとの法(モード)対照表
最後に、今回紹介した表現がどの法(モード)を取るかをまとめました。迷った時の参考にしてください。
| 表現(スペイン語) | 直説法 | 接続法 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Quizá / Quizás Tal vez Posiblemente Seguramente | 〇 (確信度:高) | 〇 (確信度:低) | 文末に来る場合は 直説法のみ |
| A lo mejor Capaz (que) | 〇 | × | 口語で頻出 |
| Creo que | 〇 | × | No creo que は接続法 |
| Puede que Es posible que | × | 〇 | 可能性・推量 |
「たぶん」の使い分けは、最初は難しく感じるかもしれません。まずは A lo mejor(直説法) や Puede que(接続法) など、使い方が固定されているものから使ってみて、慣れてきたら Quizá でニュアンスを調整してみるのがおすすめです。

